宝石箱
1
貴方の小さな仕草を
覚えているわたしの未練
記憶と重なる姿が
またわたしをイラつかせる
貴方は消えたあの街の夜のネオンに
眼がくらんで立ち止まっているわたしの前から
輝くダイアの零れ落ちそうなリング
繊細なガラスの象が吼える夜なら
こんな惨めに泣くことなんてなかったろうに
嗚呼
可哀相なのと薄く笑って見せる度に
わたしはひとり上手になっていく
2
わたしの細い薬指
一度は通ったあのリング
今は軽くて飛び立てる
繋がる鎖が無ければ
わたしが集めた世界中の宝石は
輝きを失いただのガラクタに成り下がる
血の様に燃えているルビーのネックレス
甘いオパールのライオンが歌うから
笑顔を張り付けた鏡の前に立っている
嗚呼
貴方を追いかけない足の重さに震える
わたしはつれない人だったのねえ